「私達がここに招待される、本当の日をごまかすためよ。
貴方は雅則兄さんから指定された日より一ヵ月も前に、私達をここへ招待したのよ。
だから、私の持っているこの封筒の中にある権利書は、まだ期限切れまで一ヵ月以上もあるはずよ。
あのテープの最後を消すことによって、貴方は私達に錯覚を起こさせたのよね。
兄さんはテープの中で、自分の命はあと三ヵ月だと言った。
兄さんのお葬式があったのは、今から三ヵ月前。
この三ヵ月と三ヵ月を単純に計算すれば、あのテープを作ったのは半年前だと、そんな錯覚を起こしがちなのよ。
だからあのテープの中で雅則兄さんが言った、
『ちょうど半年後』
という言葉に、誰も疑問を持たなかったのね。
でも、本当は違うわ。
兄さんはあのテープを作ってから、三ヵ月は生きられなかったのよ。
あのテープを作ってから、二ヵ月で死んでしまったの。
だから今日は、あのテープを作った日から、せいぜい五ヵ月位しかたってはいないはずよ。
本当に私達がここに来るべき日は、あとひと月先だったのよ。
テープの最後を消すことによって、雅則兄さんがテープの中で言った正確な日付を消すことによって、貴方は私達を騙したのよ。
そして、この空白の一ヵ月を利用して、この屋敷をバラバラに解体してでも、この権利書を見つけるつもりだったんでしょ、鹿島さん」
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