『義人さん、お久しぶりです。お元気ですか?多分3月に、こちらに来ますよね?…実は、今月いっぱいで辞める予定です。突然ですけど…妹の体調が良くなくて、夜働くことが困難になりました…前にも話しましたよね?
パジャマ姿の入院中の妹の写真と一緒に。母も年なので、しょうがないんですけどね…。この数年間、指名客もいなかった私を、遠くから会いにきてくれて、本当に感謝してます…私は、麻由さんとは事情が違うので、ある意味生活が、かかってましたけど、それを承知の上で、優しく接してくれて、嬉しかったです。
…だから、私のために、お金を使うのは、ないですよ。
義人さんとは、いつか違う形で会えればいいなと思ってますよ』
全文を見て、義人は覚悟していた。
確か、自分でも、りおに言ったことがあるのを、思い出した
『妹さんのことがあるから、無理しないで、辞める時は、思いきって辞めた方がいいよ』
(確か、そんなこと言ったなあ…)
まあ、しょうがないか…いつかは卒業しないといけない世界だし…
義人は、惜別の意味を込めて、励ましのメールを送った。
『よく決断したね。こちらこそ、楽しい思い出をありがとう。思えば、はじめてそっちに行って、いろんな出会いがあって…友達の少ない俺には、りおさんとの出会いは、最高の時でした。相変わらずのお人好しっぷりは、直ってないけど、俺もいつか、りおさんと違う形で出会えることを願ってますよ』
違う形…義人には、それ以上のことは、書けなかった。
りおもまた、同じだった。
…そうか、3月どうするかな…かすみや、由美と会うことは決まっている。
あれから数年…なかなか、恋愛的なことには、発展していなかった。由美の店も、なんとなく続いていた。
そろそろ哲彦からも、言われている。
はっきりしろと…
だが、これも巡り合わせなのか、義人にしても、かすみにしても、由美にしても、最後の一歩手前でとどまっていて、そこから先に行くことが、出来ていなかった…