全力疾走後のサラブレッドのように肩で息をしていたお馬さんは大人しく座りなおすと、恥じ入ったように野ねずみ父さんに頭を下げて言いました。
「すみません…。つい日頃の恨みつらみが…。先生に言っても仕方のないことですのに。」
お馬さんは心底申し訳なさそうに、少し迷いはしましたが誠実そうな黒い瞳で野ねずみ父さんを真っ直ぐ見つめて言いました。
「八つ当たりをしてしまいました。本当にすみません」
野ねずみ父さんは言われた方がどう思うかを思いやってきちんと謝ってくれたお馬さんの正直さをうれしく思って微笑むと、どうぞお気になさらずに。とお馬さんに言いました。お馬さんも野ねずみ父さんが快く赦してくれたことでホッとしたようです。
「こちらには色々な方がおいでになりますが、皆さんたいそう思い詰めてから駆け込んでいらっしゃるので、一気にその抱え切れなくなった思いを吐き出してしまわれるようです。
どうか辛いことでもあまり溜め込まずに、少しずつ外へ出して伝えたいと思う相手に伝えてゆくようになさって下さい。」
「ええ、そうですね。みんな誰でも鈍いものですから、言われなければ分からないこともありますよね。」
お馬さんは寂しげにしんみりと笑って言うと、同僚ときちんと話し合ってみると言って帰ってゆきました。