ドレーはその不意討ちに対応しきれず、タクトの斬撃を胸で受けた。
「馬鹿が!お前の剣は俺を貫けない」
ドレーの余裕の笑顔も見ずにタクトは大声をあげながらドレーの体に剣を向ける。
「ふざけるな!必ず、お前を、斬る!」
タクトの斬撃にさらに力が込もる。
やがてドレーの体から一滴の血がながれた。
「馬鹿な!」
慌ててタクトの腹を殴る。
タクトは後方へと勢いよく突き飛ばされた。
「・・・俺を傷つけた、だと!」
動揺を隠せず胸元に手を当て、自らの血をまじまじと眺めた。
「・・・あなたは、私たちには・・・勝てない!」
そう言いながら震える足でなんとか立ち上がり、弓を構えたのはパールだった。
ドレーが驚いて振り向いたのと同時にパールは弓を引き絞り、胸元の傷へ弓を放った。
「くっ!・・・小娘が!」
矢は傷口をさらに広げ、ドレーを苦しめた。
「これで、終わりだ!」
ドレーは背後から向かってくるタクトに向き直ると腕に力を込め始めた。
「クソガキが!」
だが、ドレーの行動はタクトには遅すぎた。タクトはドレーが力を込めている間に懐に入り、全力の斬撃をドレーの胸へ放った。
タクトの気合いの籠った声とドレーの雄叫びとが交錯する。
ドレーの傷は確実に広がっていき、やがて剣はドレーを貫いた。
無音の空間にタクトの荒い息づかいだけが聞こえる。
「お前の敗けだ、ドレー」
しばらくの沈黙の後、ドレーの崩れ堕ちる音が二人の耳に届いた。
パールが自分とタクトの傷の応急処置をし、少し休みましょうと提案した時だった。
「駄目だ、もう時間がない」
タクトは重い足を引き摺りながらさらに上の階を目指した。
「ダメよ、もう少し休まないと!」
パールが急いでタクトを追いかけるが聞く耳を持たず、ただ黙々と階段を昇る。
「タクト!」
パールがタクトの腕を掴んだ時だった。
「時間がないんだ!今下では絶望的な戦力の差での戦いが行われているんだ!もし、僕達がここで立ち止まってしまったら、たちまち下の兵士達が追い付いてくる!そうなったら僕達の負けなんだ!早く、早く不死鳥を召喚しないといけないんだ!」
そして、タクトは走って階段を駆け上がり、パールもその後を追った。