あれからどのくらい経っただろう。
アキは気づけば手術室の前にいた。
祈る。ただそれしかできない。
私を1人にしないで…私を1人にしないで…と
何回も何回も繰り返した。そこに、カズヒロ達が来た。
「アキ。」
アキはカズヒロ達の気配に気づいた。
『みんな…。』
「お母さんは?」
『まだ手術中…。』
手話もたどたどしい。
「カズヒロくん。今は1人にしてあげた方が。アキ相当憔悴してる。」
「あぁ、だな。」
サユの勧めで、カズヒロはアキから離れて座った。
10分後、手術室から医者が出てきた。
その周りを囲む5人。
アキは医者に尋ねた。
…というより、ノートを見せた。
『お母さんは?』
医者の顔が曇る。
その時カズヒロが意味深な行動をとった。
アキの前に立ったのである。
案の定医者から出た言葉は、
「残念ですが…。」
カズヒロのせいで、唇が読めなかったアキ。
カズヒロは、なるべく最後の最後までアキを悲しませないために、アキの前に立ったのだ。
アキはカズヒロに聞いた。『なんて?』
カズヒロは棒のように突っ立ったままだった。
でも、周りにいたサユが泣いていた…。
ということは。