二人は内心「これで、ドラマや映画を作っていたんだ〜」と、感心していたが、雪野が
「あっ!でも音だけだと、怪我しないんじゃないんですか?」
もっともな質問には大津が答えた。
「だから、スタジオ内のスタッフ数人には事前に知らせておくよ。もちろん警備員役の人にもね」
「数人?全員に教えといた方がスムーズに会話が進むんじゃないんですか?」
大津の回答に疑問を持った京都が質問すると
「だって、知らない方がよりリアルな演技ができるでしょ?」
その答えには旬が笑いながら答える。その笑い方はまるで京都見たいで、雪野は不安を覚えた。この人も鏡君と同じ性格かもしれない。無邪気な悪意が一番厄介なのは雪野がよく知っている。
「旬くんは言わなくてもわかるように名俳優だからリアルな演技ができるからいいけど、問題なのは君たちの演技だ。少しでも演技を見破られたら警察に踏みこまれて渡沼がスタジオまで来ないからね」
大津がそういうと京都と雪野は不安になった。演技など素人な二人にそんな高度な事が出来るのだろうか?二人が不安になっていると旬がやさしく
「大丈夫。本番になったら僕の事は本気で蹴ってでも殴ってもいいから。これでも俳優だから根性は人よりあるつもりだ。それに、君たちは昨日警察を人質にして逃げたんだろ?その時を思い出せばいいよ」
そして、現在予定通り大津の息のかかったスタッフ数名は見事な演技をして他のスタッフはいきなりのテロ行為に本気で怖がっていた。雪野が京都に指示をすると京都はカメラマンにはカメラはそのまま流し続けるように指示し他のスタッフとともにスタジオの外に追いやった。
「人質はこの二人とそこに倒れている警備員の三人で十分だわ」
雪野がライフルを二人に向けながらカメラに向かって言うと
「おっお前らの目的はなんだ?一般人を殺して次はジャックか!?」
流石名俳優、本当に人質に取られているような口ぶりであった。そんな名演技に関心する雪野だったが、ハッと我に返り
「フッ……一般人ねぇ。警察の情報操作には本当に驚いたわ。鏡君!そこの警備員をこっちに連れてきて」
と、冷たい声で旬の事を見ていた。流石優等生雪野様だ。演技には到底思えなかった。京都に指示をして人質三人をスタジオの中心に集めた。