「あの公園で遊んでてリクちゃんが帰ろうとした時、あの子リクちゃんのあと追いかけて土手をあがっていったの。そしたら、車とぶつかって……」
続きは聞かなくてもすぐ分かった。
その子は、死んだんだ。
その時、私の脳裏に昔の記憶が蘇った。
*
お母さんに連れられて、高校の近くの公園に来た。
公園を見ると、誰かが母親と一緒に遊んでいた。
私と同い年くらいの男の子で、私はその子と遊ぼうと近づいていった。
「ねえ、一緒に遊ぼ?」
「うん。いいよ」
その子は笑顔でいった。
こっちまで笑顔にさせるような、温かい笑顔で。
私とその子はすぐに仲良くなった。
それからよくあの公園で会うようになって、会うたびに一緒に遊んだ。
ある日、あの子と公園で遊んでいた私は、当時習っていたピアノの稽古時間になるという理由で、遊びを途中で止めてお母さんに手を引かれながら車に乗り込んだ。
私はもっと遊んでいたかったけど、ピアノが好きだったから駄々をこねるようなことはしなかった。
車が発進してしばらくすると、後ろからドンって凄い音がした。
お母さんはすぐ車を止める。
振り向くと、私が乗っている車の数メートル後ろに1台の乗用車が止まっていた。
遠くてよく見えなかったけど、前の方が凹んでるように見える。
「リクは車にいなさい」
お母さんは車から降りるとしばらく帰ってこなかった。
周りからは救急車やパトカーの音が聞こえてきたけど、当時の私には何が起こってるのか分からなかった。
待ちくたびれた私はいつの間にか眠っていたみたいで、起きた時には家に着いていた。
私は目をこすりながらシートから起き上がる。
お母さんはハンドルに突っ伏していた。
「お母さん、どーしたの?」
私がそう聞くと、お母さんは顔をあげて薄く笑った。
「……何でもないよ。さ、家に入ろ」
お母さんの目の周りは赤くなっていて、その理由を聞いても、何でもないよって言われた。
そしてあの時聞いた音のことを聞いても、返事は一緒だった。
それから、あの公園には行かなくなった。