『ねぇ、おじちゃんは何でそんなにやさしいの?』
小さな女の子がききました。
おじちゃんは答えます。
『昔ばなしをしてあげよう。』
1つ以外は普通の家族がありました。
お父さんとお母さんと僕と犬、たまに猫も遊びに来てた。
みんな仲良し、犬と猫も。
僕が家より大きな事以外は、普通の。
家は森の奥深くにあった。
家族以外はだれもいない。
僕は幸せだった。
お父さんとお母さんが天国へいってしまうまでは。
僕はどうしたらいいか解らず、町へ出たんだ。
みんなが僕を怖がった。
違うと言った。
石を投げられた。
捕まり、売られ、戦わされた。
僕は強かった、誰にも負けなかった。
僕はわるい事だけはした事がないと思っていたし、お母さんとの約束だったから。
でも違ったんだ、
『やらされているんだ。
仕方ない、僕のせいじゃない。』
いっぱい人を傷つけてしまった。
逃げだした。
その後は
山から雲に飛び乗ろうとしてみたり、
海でクジラと競争したり、
色々あった。
つらい思いをいっぱいしたし、楽しい思いもいっぱいした。
でも、幸せは見つからなかったんだ。
そして、何年かたって家にかえった。
犬と猫に話をした。
そうしたら、犬と猫が僕に言ったんだ。
『きみがかえってきて、僕ら幸せだよ?』
僕は幸せだった。
見つけるものではなかった。
そこにあるものだった。
いつも、いつでも持っているものだった。
『昔ばなしは、これでおしまい。』
ちっちゃい女の子は、また言います。
『だから、おじちゃんは何でやさしいの?』
おじちゃんは答えます。
『今、幸せかい?』
『うん、幸せよ?』
それは、とても遠くてとても近い国のお話。