『奈央!!合唱コンクールの自由曲だけどさぁ、開票した結果、“大地讃頌”に決定だって!!』
『あ、ユカ。
実はあたしも“大地讃頌”って書いたんだよね♪』
『え?!奈央も?!実はあたしも。
放課後、早速練習だってさ。』
『えっ‥今日から?!』
うちの中学校では、毎年秋に、恒例の合唱コンクールがある。
課題曲は無くて、
各クラス、自由曲1曲のみなんだ。
『ピアノは、ユカに決まってるし、
指揮者は―――』
チラッッ‥‥‥
ユカとあたしは、ほぼ同時に、
斜め後方に位置する、誰かさんの席に視線を向ける。
『‥‥‥あ?!何?!俺?!』
聖人ったら、
まるで他人事だよ☆
『え〜、ただいまより、わたくし秋田谷ユカが、開票結果を、ご報告致しますッッ!!
指揮者は、北岡聖人君に決定!!
わ〜〜パチパチパチパチ!!』
ユカから開票結果を聞いた時の聖人の顔ったら――
『マジ?!何で俺?!他にやりてーヤツいるんだろ?!
ならソイツにやらせろよ。』
何か可愛いッッ♪
『だ〜めッッ。
多数決で、もう決まったのッッ。
ほら、奈央からも言ってやってよ!!』
そ、そんなコト言われても‥‥
『聖人。
みんなで、いい思い出作ろ?!』
こんなコトしか言えないよ。
聖人は、少し困ったような顔をしてた。
『ちょっと煙ってくるわ。』
あたしの言葉への返事は無かったケド、
きっと、引き受けてくれると思うんだ。
だって、この前言ってたもん。
思いっきり、楽しい2年の思い出作ろうねって。
『照れるガラか?!
ね、奈央もそう思わない?!』
『あはは。』
秋は、ちょっぴり寂しい季節。
そんな季節は、
みんなで力を合わせて何かを成し遂げたい。
そんな秋の今日この頃――