それを見ていたカズヒロは、話し掛けてみた。
「アキ。」
『…。』
返事がない。でも聞いているようだ。
「ちょっと遅いけど、飯食わないか?」
『えっ?』
「俺、喫茶店でコーヒーしか飲んでないから…腹減ってるんだ。」
アキはカズヒロをじっと見ていた。
「どう?賛成?」
『じゃあ、私の家くる?』「…え?」
予想外の答えにカズヒロは驚いた。
『ちょうどご飯食べていたときにお母さん倒れたから…。温め直せば食べられるのに、もったいないなと思っていたから。』
「え…えぇ…?」
困惑するカズヒロ。
『…まさか、変な事考えてないよね?』
「あ…ごめん。ある程度考えてた?」
『このどスケベ!』
アキはカズヒロをバックでたたいた。
いつもの、いやそれ以上の明るいアキ。
でも、わざと明るく振る舞っているのかもしれない。カズヒロはそう感じた。
アキのアパート。
『ここが、私が住んでいるアパート。2階ね。』
「俺も、アパート暮らしなんだ。」
『一戸建てとか、ほしいね。』
アキは、初めて自然に笑った。
アパートの中に入ると、お母さんがついさっきまで食べていた肉じゃがや、ご飯がそのままだった。
『ごめん…今片付けるから。』
「おぅ。」
アキは、新しくご飯をカズヒロに出してあげた。
「じゃ、いただきます。」『私もいただきます。』