カズヒロは食べようとしたが、少し躊躇してしまう自分がいた。
「なぁアキ…。」
『どうしたの?』
「これ、お母さんが最後に作ったやつだろ?俺なんかが食べていいのかな?」
アキは大きく頷いた。
「そうか。」
しばらく食べ進めていると、
『あ…カズヒロ…。』
「ん?」
『私、明日から学校行くよ。』
「そうか。」
カズヒロは、あえて何も言わなかった。
『つらい時とか、困っている時とか、あなたがいるもの。私自然と笑顔になれた。ありがとうカズヒロ。』
「こっちこそ、ありがとう。」
2人の時間は、あっという間に過ぎていった。
帰りぎわ、玄関でカズヒロはアキに告げた。
「ずっと味方だ。…アキはひとりじゃない。」
『うん。そうだね。』
カズヒロ…。
あなたが側にいてくれたことで、
どれだけ私が救われたと思う?
それはきっと、カズヒロが思ってる以上だよ。
私はあなたに出会えて幸せだった。
本当に幸せだったよ。
これからもずっと、私の側にいてね。
…アキ。
君は、とてもつらい人生を歩んできていたんだね。
アキにとって、幸せが少しでも増えますようにって、
俺はずっと祈っているよ。
こんな早くに両親を亡くしても、頑張って生きようとしているアキは、
俺の励みになるよ。
俺はアキの支えになれるように、
努力していきたいよ。
2人の思いが、高まっていく。
でも、その思いをぶち壊しにする人は、すぐ近くにまで来ていた。