恋は感情を凶器へと変化させ、平凡を破滅へと誘う。
彼の本心?を聞いても、私は私を止める事が出来ない。
それまで何年もストレートで手を加えた事もなかった髪にウエーブをつけた。
鏡を見ながら
(少しは若く見えるかしら?)…そんな事ばかり考えた。
恋は本当に恐ろしい。
すっかりオバさん(と言うよりオジさん)化していた砂漠がみるみる内に潤い、女であった事を思い出させたのだから…。
20才で短大を卒業してから、結婚し二人の子を出産した前後の数ヶ月以外は、ずっと働いてきた。
若い頃はそれなりに友人達と遊んでいたが、これと言った趣味の無い私は、子ども達が手を離れかけた今は仕事に没頭していた。
家庭よりも仕事を優先する事も少なくはなかった。
僅か10日程の間に体重が5?落ち、精神状態は不安定そのもの。
そんな妻の変化を体調を崩したせいと夫は信じて疑っていない様子。
後ろめたい気持ちが一杯で、家族に精一杯つくした。
悪化の一路を辿る精神状態とは裏腹に家庭はどんどん円満になっていった。