『さぁ!!みんな、
もう1回合わせて見るわよ〜!!
秋田谷さん、ピアノお願いね。』
音楽の白井先生が、クラスをまとめようと必死だ。
あたし達は、合唱コンクールに向けての練習真っ最中。
練習は、放課後以外に、音楽の授業でも行われるんだ。
『先生ェ〜〜。
指揮者もいないのに、どうやって練習すんの?!』
タツヤの言葉が、あたしの胸の鼓動を一層早くさせる。
聖人。指揮者に抜擢されてから、1度も練習に参加していない。
もちろん今日も‥‥
『北岡君は、まだ1度も練習に参加していないそうね。
もし、このままの状態が続けば、次点の藤木タツヤ君に代わってもらう必要があるわね。』
白井先生は、保健室の篠原先生に負けない位の美人だ。
篠原先生と違うのは、とてもクールな所。
練習に参加しない聖人に対してだって、すぐに代理人を考える所が合理的だと思う。
もし、篠原先生だったら、きっと聖人を説得してくれるだろうな。
聖人が素直に聞くかどうかは分からないケド。
『だ〜か〜らぁ〜‥‥
北岡が指揮者ってコト自体間違いなワケじゃん?!
誰が投票したワケぇ〜?!』
サチヨってば、
また事を大きくするようなコト言うし。
『俺は入れてねェよ。
投票してねーし。
大体、北岡は、クラスのチームワークなんて考える様なヤツじゃねェだろ?!』
サチヨの言葉にタツヤが反応する。
ケド、そんな言い方は‥‥
確かに練習に参加しない聖人が悪いかも知れないケド、
そんな言い方はないじゃん。
『ま‥聖人は来るもん!!』
タツヤを睨み付け、思わずそう言ってしまったあたしに対し、
尚もタツヤは畳み掛ける。
『ヘェ〜〜。
カノジョとしては、カレシを信じたいトコだよな。
俺には、北岡がビビって逃げた様にしか思えんがな。』
あたしがタツヤに言い返そうとした、
その時だった――
『誰が逃げるかヨ?!タツヤ。
テメェじゃあるめーし。
おい、お前ら!!
練習始めンぞ!!』