第12話
ゆずちゃんはベンチの左端に、僕はゆずちゃんの右側に座った。真っ暗な周りを見渡す。
深夜の壮大な公園には誰も居なかったが、右の空に僅かながら大きなお月様が見えた。
三日月より薄い月、月齢25であろう。低い夜空にぼんやりと大きく見えた。
全てが揃い、歯車が噛みあい始めたように思えた。
ゆずちゃんの放つ甘いブルガリの香りが、僕の心を狂わせはじめる。
気付くと、僕はゆずちゃんに寄り添い抱きしめていた。抱き寄せながら彼女の肩口から背中、首筋、耳、胸元へと僕は唇を這わせていた。
ブルガリの香り、彼女の肌の香り、彼女の髪の香り、僕は全てを感じた。彼女から吐息が漏れる。そして僕の唇は彼女の頬から唇へ・・・。
どの位の時間、彼女を抱きしめていたのだろう。時間が止まっていた・・・、まるでスクリーンの中に居るような感覚に包まれていた。
彼女と一度離れて何か会話をした。(と思うが、何を話したかは記憶が無い。本当だ)
しばらくして僕は今一度彼女を抱きしめた・・・、先程よりも強く。離れたくなかったのであろう。