麻由との最後の、お店でのやりとりを終えた哲彦は、麻由と昼食を取っていた。
「ごめんね。最後の出勤日もいてもらって…」
「いや、でもこれからは、自分の進むべき道に向かって、頑張ってね」
「うん…。でも哲さんこれからも会ってくれるよね?」
「もちろん!ただ、そっちの都合もあるから、なるべく早く予定を教えてくれたら、調整するし、いつでもこっちに来るよ」
「本当?…ありがとう」
「いや、こちらこそ、これからも関係が続くから、嬉しいよ。」
「あのね…私の本当名前は、孝美ってゆうの。だから、これからは、孝美と呼んでね」
「孝美かあ〜。うん…孝美ちゃん、これからもよろしく!」
「はい!!」
だが、哲彦のちょっとした、寂しげな表情に気づいた麻由は、何かあったなと感じた。
「哲さん…思いきって聞くけど…」
「何?」
「最近、ちょっと落ち込むことあったでしょう?」
その質問に鋭さを感じつつ、極めて冷静に答えた。
「そんなことないよ。まあ、あるとすれば、また、一つ年をとることを、しみじみ感じることかなあ〜」
「ねえ哲さん、あの人はどうしてるの?今回も来てるんでしょ?一緒に。りおさん辞めたから、どうしてるのかなあ〜って思って。」
「ああ…あいつは、今回観光のみに来てるよ。原点に戻ってってゆうか…」
「ふ〜ん。でも感謝しなきゃ。前にも言ったけど、今、哲さんとこうしていられるのは、あの人のおかげだもんね。」
「ああ…そうだね。まあ、あいつは、あいつなりに、自分の道を見つけるよ。長いつきあいだし」
「本当はね、会ってお話ししたいんだよ!感謝してるし。でも…きっと、私とあの人には、私と哲さんにはない、壁があるような気がするんだ…」
麻由の指摘に感心しつつも、哲彦は最後に言った。
「俺としては、あいつが幸せになった時に、話せる時が来るんじゃないかな?まあ…その時が遠い将来じゃないことを祈ってるよ」
「そうだね…」
こうして、哲彦と麻由は、しばらくの間、お互いの道を歩むことにした。
(なんか、文子さんの時と同じになりそうだな…)