電車がいくまであと一分
人混みの中を貴方と私が走る。
この前あったのはちょうど一ヶ月前だった。
前も確かこんな別れ際だったけ。
そんなことを考えながら貴方についていく。
貴方が電車に乗り込む
私はホームに残る
二人を隔てる黄色い線
「またね」
無数の雑音の中からその言葉が浮き出て聞こえる
やがて発車の音楽がなりドアがしまり、私達の世界が途切れる
もう慣れたはずなのに
やはりいつも別れ際はとても寂しくなる
私は貴方になにかたくさんのことをもっといいたかったけどひたすら手を振ることしかできなかった。
電車は止まらない。走り出す。
やがてホームには閑散とした空気がながれていた
向かい側のホームでベルがなりだす
隣の老人夫婦があるきだす
学生たちが騒ぎだす
エスカレーターに人が溢れる
空に鳩が飛ぶ
駅員が笛を鳴らす
書ききれないほどの風景が一瞬で私の五感にへばりつく
隣には貴方はいない
深いため息をしてゆっくりと瞬きをする
ああそうか
私は貴方に「大好き」といいたかったんだな
ふとそう思って、私はホームをあとにした。