第14話
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、彼女は『背中がかゆぅ〜い』、『蚊にさされたぁ〜』、と大きな声で(可愛い声なのだ)、
『公園のベンチで蚊に刺されるなんて・・・青春だね』
なんて話しながら二人は歩いていた。
大通りの交差点の横断歩道を渡ると、夢の世界から現実へと引き込まれた。
誰がマンションのバルコニーから見ているかわからない。
僕は二人が偶然出合ったかのような距離を保ちながら歩いた。(彼女に迷惑が及んだら大変である)
彼女はそんな僕の気持ちを知ってか知らずか『背中がかゆい』とせがみ、僕に掻かせた。
やはり女王様である。
やがて女王様は自分のマンションに着いた。
僕にさよならを言った。サズガにもうムギューは出来ない。
お互い心の中では別れを惜しんだが、ゆずちゃんは、何も無かったように中に消えていった。
第一節 完