暗がりの道を、ユウタが照らしながら進む。
「道に迷いそうな人じゃないよね、2人とも。」
ヒロが不安げに暗がりの先を見つめる。
『私のために…ごめん。』アキは2人に謝った。
ヒロとユウタも、そのくらいの手話は分かった。
「気にしなくていいよ。それより、アキちゃんは優しいんだね。」
ヒロはアキを誉めると、アキは林檎のように赤くなってしまった。
3人が、徐々にトイレに近づいていく。
するとユウタが
「なんか、声が聞こえるから、近くにいるかもよ。アキちゃん。驚かしてあげなよ。」
ユウタのこの提案が、アキを苦しめさせることになろうとは…。
『うん。』
アキは頷いて、そっとまだ姿が見えない2人に近づいていった。
トイレの建物の死角から2人を見つめた。
…すると、
…サユが、
カズヒロを抱きしめていた。
え…?
どういうこと…?
凍りついているアキを見たユウタとヒロは、
「どうした?」
アキは、2人を指差した。そこには、
抱き合ってる2人の後ろ姿。
「え…。」
アキは、その場に崩れ落ちた。
「俺が言ってくる。」
ユウタは、アキの代わりにずんずんと2人に近づいていく。
「おい!どういうことだよ!」
ユウタは、カズヒロの胸ぐらを掴んで蹴り飛ばした。「ユウタ…。」
後からヒロも駆け寄ってきた。
「アキちゃん…2人のこと心配で探してたのに…。2人がこんな風になっていたなんて…。」
すると、サユが
「私が悪いの。私がカズヒロの事好きって言ったから…。」
「サユは向こうにいるアキに謝れよ。」
サユはユウタに促され、アキの方へ向かっていった。「俺も…アキに謝らないと…。」
カズヒロは、ふらつきながらも、アキの方に向かおうとした。
それをユウタが止めた。
「お前に1つだけ言っておきたいことがある。」