旬はこれ以上ここにいたら共犯したことがバレルと、思いアナウンサーと警備員を連れて局外に出た。
「雪野ちゃん・京都君……ごめん」
と口パクで謝ると京都と雪野は眼で
「ここまでしてくれて感謝しています」
と、いう意味を込めて微笑みすぐに渡沼に目を向けた。渡沼はそのやり取りを見て何か不気味な笑みを浮かべていた。
旬達がスタジオを出て十分経つと監視カメラで外に出る映像が流れた。どうやら無事に脱出できたようだ。
警備員はすぐに救急車に乗って運ばれた。もちろんこの救急車も大津が用意した偽の救急車だ。そして話は冒頭に戻る。
京都と雪野は今までの渡沼に対する怒りを深く抑え込んで渡沼と対峙した。
言いたいことは山ほどあるが二人は渡沼の不気味な笑みに戸惑って先手を取れなかった。
何も言わない京都と雪野に渡沼の方が先に話し始めた。
「いったい私をこんな全国中継されているところまで呼んでどうするのだね?ようやく出頭する気になったかね?」
と、あくまでも警視総監として話す渡沼にとうとう京都が
「てってめ〜!?」
京都が握り拳を作ったので、雪野は慌てて止めようとした。しかし
「ふっ……僕らはまだまだ子供だ。日本警察から逃げ切る体力も精神力も限界だ。ここらで白黒付けなければじり貧で負けると思って強引な手に出たんだよ」
意外と冷静に話出したので雪野も続けて話した。
「まず、あくまで私達冤罪を主張する事をここに宣言します。そこで、愛知県警のトップであるあなたから、何故私が犯人になったのかを教えて頂きたいのです」
雪野が冷静に聞くと
「なんだい?君らは自分の事件のこともろくに知らずに私をここに呼んだのかい?報道陣には情報操作で伝えていなかったが、事件現場に青山君の生徒手帳があったのだよ……血痕付きのね」
渡沼が不気味な笑みを浮かべながら答える。確かに、生徒手帳のせいで雪野は犯人と断定された。
しかし、京都達は現場近くの廃墟でライフルの薬莢を見つけた。この事実から生徒手帳の証拠は無意味となっているが、渡沼ならば薬莢ごときもみ消すことが可能だろう。それに、肝心の薬莢は杉本が処分した。これで証拠は振り出しに戻った。