02.
「下校時間過ぎちゃうよ?」
その人の肩を軽くつつきながら言ってみた。
でも起きる気配がない。
下校時間まで残り5分。
あと1回声かけて起きなかったら見捨てよう。
見回りの先生来るだろうから、その先生に任せればいいや。
「ねえ、起きて!」
さっきより声を大きくして、肩を強く叩いてみた。
これなら絶対起きるでしょ!
「うー……ん」
その人は目を擦りながら、ゆっくりと起き上がった。
とりあえずこれで一安心。
「下校時間だって」
私がそう言うと、まだ眠そうな目で私を見てきた。
思わずドキッと心臓が鳴る。
「コマツ……ユキ?」
「え、そうだけど?」
小松友紀。それが私の名前。
何で、この人が私の名前知ってるの?
でも人の名前を知る機会なんていくらでもある。
とにかく、私の役目は終わった。
私も早く帰らなきゃ。
「あの。早く帰った方がいいよ?」
そう言って、私は戸の方に体を向けた。
1歩踏み出した時、私は制服の袖をつかまれて振り向いた。
制服の袖をつかんでいるその人は、上目遣いで私を見つめている。
そしてゆっくり立ち上がった。
身長は私より頭1つ分大きくて、今度は私が上を見上げるようになった。
その人は私の制服の袖をつかんで、何も喋らないで私を見つめている。
「え、えっと……。放してくれない?」
そう言ってみたけど、話してくれる気配がない。
これは強引に放すしかない。
そう思って、私は制服の袖をつかんでる腕に手をかけた。その時だった。
私の唇に、その人の唇が触れる。
私は目をみはったまま動けなくて、一瞬何が起きてるのか分からなかった。
それがキスだと分かった時、私はその人を突き飛ばすようにして離したあと、その人の頬にビンタを食らわした。
反射的に手が出て、はっとした私はどうしていいか分からず走って図書室から出た。