夏の終り
夕暮れに消えるように
貴方はなぜ
空の向こうへ
逝ってしまったのでしょう
まるで季節を旅するかのように
貴方はなぜ
気づかぬうちに
逝ってしまったのでしょう
そんな優し過ぎる気遣いが
とても貴方らしく哀しいのです
何もかも憶測の域を出ず
真実は誰にも
わからないのです
心など
決してわかり合えぬ
この世界で
想像など何の役に立つのでしょう
それでも
遺された者は
どうしようもなく
考えてしまうのです
貴方のことを思い出すたび
私は涙が止まらず
声が止まらず
嗚咽してしまうのです
あの日
あの時
貴方は私に
生きていくと
決意してくれたではないですか
思えば
何もかもが
不十分だったのですね
もっと貴方と話していれば
何かを変えられたのでしょうか
貴方のことを理解できずに
貴方のことを救えずに
貴方と共に暗闇を歩めずに
陽の光りも
月の明かりも
貴方の心には
届いていないことに
気付いてあげられなかったのです
どうか
一人で弔問したことを
お許し下さい
遺された人を思うと
連れ立っての弔いなどできず
誰の誘いも断るしか
出来なかったのです
それで遅くなったことも
私の我儘でしかないのです
それでも
一人で逢いたかったのです
誰のものではなく
私と貴方の心だけの会話
涙声で聞こえずとも
言い訳ひとつ
憎しみひとつ
哀しみひとつ
今更だとかは
思えずに
伝えたいのです
思い出幾つ
再会に幾つ
未来に幾つ
短過ぎる時に
今からだったのに
始まりだったのに
戻らぬ時と
戻らぬ命と
戻らぬ声が
私の目と耳から
離れないのです
責任など
それが命でしか
償えぬものではなかったのに
貴方のその優しさが
あまりにも痛すぎて
あまりにも哀しすぎて
帰らぬ貴方に
戻らぬ命に
ただ悔やむことしかできないのです
せめて
この世界で結ばれぬのなら
貴方の望む世界で
貴方の望むままに
誰にも遮られずに
幸せになれますように
せめて
貴方の逝く空の向こうで
愛する二人
幸せになれますように