「児玉君…ちょっと…」
教室の戸が開き校長直々に児玉守を呼んだ。
「あ…はい…」
ざわめく教室から守は戸惑いつつ出た。
「児玉議…お祖父さんが亡くなったそうでお家から電話がかかってきました。すぐ迎えが来るそうなので帰る用意をしてください」
校長の言葉に守は驚いた。
「そんな…お祖父様が…」
守の体が震える。
その様子を窓際の河田ゆかりがじっと見ていた。
「守君のおじいちゃん死んだんだって」
ゆかりは鉄棒にぶら下がりながら言った。
「えっ!それで守早上がりしたの?」
佐々木優太は目を丸くした。
「おもしろいおじいちゃんだったのになぁ。もう遊んでもらえないのか」
宮武真二が残念そうに地面を蹴った。
「病気かな?守君おじいちゃん大好きだったのに可哀相だね…」
平松奈美は少し涙目になった。
「……そうだね…」
ゆかりは心ここに非ずな様子で空を見上げて頷いた。
「飯野の親父は犯罪者なんだぜ!」
「学校来るなよ!犯罪者!!」
飯野直幸は数人の同級生に囲まれていた。
顔は赤く腫れ、膝からは血が出ていた。
服も泥まみれでランドセルは傷だらけになっていた。
それでも
「僕のお父さんは犯罪者なんかじゃない!」
と直幸は同級生を睨み付けた。
「ムカつくんだよ!犯罪者!!お前も死んじゃえよ!」
一人の生徒が傘を振り上げた時だった。
「こらっ!!」
大きな声が響いた。
子供達はびくっとし走り去った。
「直幸、大丈夫か?」
「おじいちゃん…」
飯野一は直幸を抱え上げた。
途端に直幸の目から大粒の涙が溢れた。
肩を震わせながら泣く直幸を一はぎゅっと力強く抱きしめた。
空には乾いた風が吹いていた。