都合のいいことばかり考えていた。
まさか…
今日この日に瀬奈が死んでしまうなんて1ミリも考えていなかったんだ。
「ごめんなさい…瀬奈…がんばったんだけどね…」
俺は瀬奈の顔にかかった小さな布をそっと持ち上げた。
………たしかに、瀬奈だ…
「………」
静かに眠るような瀬奈…
まだ、生きてるんじゃないか…
もしかしたら“おはよ、はやて”って、何事もなかったように起き上がるんじゃないか、ってくらい、瀬奈の顔はきれいに整っていた。
「せ…な…」
俺は瀬奈の頬に手を触れた。
………
冷たい………
瀬奈は、ほんとに…死んでしまったんだ…
いつもなら少しピンクに染まった頬は真っ白で、いつもまっすぐ俺を見つめていた瞳は固く閉ざされて、いつも俺を温かく包み込んでくれていた手はひどく冷え切って…