毎日がつまらない高校生活にも一つだけ良いところがあった。
図書館だ。
中学の頃は校舎内に教室二つ分ほどの広さの図書室しかなく、揃えてある本もつまらない古い本ばかりだった。
この高校には校舎とは別に赤レンガの二階建ての図書館が建っていて、いつもシンと静まり返っている。
放課後はいつも図書館へ行き、由美の部活が終わるまで時間をそこで潰す。
図書館の一階では大学受験を控えた3年生が参考書なんかを抱えてカリカリ勉強している。
私はさっさと本を選んでそそくさと誰もいない二階へ上がる。
図書館二階、中庭側の窓は出窓になっていて、古い木製の机とゆったり腰を掛けられる低めのソファが置かれている。
私は窓を少しだけ開けて、新鮮な空気を入れ、ソファに腰掛けた。
本の世界に入り込んでしばらくすると、窓の外からかすかに聞き覚えのある声がしてきた。
窓辺に手をつき、中庭を見下ろすと、綾瀬と下級生らしき女子生徒がいた。
「わぉ、ロマンス発見。」
読んでいた本よりも面白いものを発見した私はさらに身を乗り出し、耳をダンボにするが話の内容が聞き取れない。
「くそぅ、もっとこの窓開かないかな。」
グイッと力ずくで窓を開けると、『ギギィー!』と酷い音がした。