中庭にいる綾瀬と女子生徒がほぼ同時にこちらを見上げた。
「げ、マズい。」
私はスッと頭を引っ込め、ソファに座りなおした。
「盗み聞きしようとしてたの、気付かれたかな?」
それより、あれは告白の最中だったのかな?どっちから?
いや、もしやすでに付き合ってるとか?
ソファに上半身だけ横になり、一人妄想をしていた。
古いソファなので、少しカビ臭いが鼻に付く。
「やっぱ、くさッ!」
ガバッと起きると、いつの間にかソファの後ろに綾瀬が立っていた。
「やっぱりお前か。何やってんの?」
綾瀬はあきれ顔で頭を掻きながら聞いてきた。
「こう見えても趣味は読書なの。あ、このソファ臭いけど、座ります?」
そう言って自分の隣の空いたスペースをポンッと叩くと綾瀬が座った。
「お、このソファ気持ちいい!俺図書館入ったの初めてだわ。」
綾瀬はキョロキョロ周りの本棚を見渡した。
「ここ私の特等席。」
自慢げに私は言った。
「お前さっきの見てただろ。」
自慢げだった私は一気に萎んだ。
「……はい。でも、何も聞こえてないし。ってか、あの子誰?彼女?」
綾瀬とはこういう話をまったくしたことがなかったので、彼女が居るかどうかすら知らなかった。