「彼女じゃないよ。」
綾瀬はフッと笑いながら答えた。
「じゃあ、告白とか?」
「んー、まぁね。」
「どっちから?」
綾瀬は少し驚いた顔でチラっとこちらを見た。
「…あっち。」
「ふーん。彼女じゃないってことはフッたんだ?」
「まぁーね。つーか、いつもより質問すんね。いつも我関せずって感じなのに。」
綾瀬が私の読みかけの本を手にとり、目次のページを開いた。
「だってさー、うらやましいもん。綾瀬みたいに青春を謳歌している奴もいれば、私みたいに毎日カビ臭いソファに居心地感じてる奴もいる。私は高校生になったらみんな彼氏が出来るのかと思ってたのにさ。」
頭を背もたれに乗せて天井を見ながら私はふてくされたように答えた。
綾瀬は笑うと思っていたが笑わないのでチラっと横目で見ると、まだ目次を見ている。
「そんなにその目次って面白いっけ?」
本を覗き込もうとすると、綾瀬がいきなりこちらを向いた。
「じゃあ、付き合ってみる?」
「???」
何を言ってるのかしら、この人は?
綾瀬は由美が好きなんじゃないっけ?あれ?
脳内がハテナマークで埋め尽くされたとき、綾瀬がブッと吹き出した。
「か、からかったなー!」
私は綾瀬の肩をグーで殴った。
「じゃーな。」
綾瀬は笑いながら図書館を出ていった。