第1話 こころ ?
下に降りて、パパが書斎にいる事を確認した。ママはリビングでテレビを見ている。
そして、台所に行って、用意しておいた、ホットウーロン茶入りの水筒を手にとった。
「水筒なんか持って、どこ行くの?」
急に声をかけられて、少しドキッとなった。
「別に。夜中にお茶飲むと、ダイエット効果あるって聞いたから。」
あわてて、ウソをついた。
「へ〜ぇ。そうなの。」
ママは、興味なさげに、ひねっていた体をテレビに直した。
急いで部屋にもどり、身仕度を整える。
窓を開けると、10月の風は冷たく、カーディガンとマフラーでは、夜の潮風は少し堪えそうだ。
私は、クローゼットから、去年のダウンジャケットを取り出した。
これで、大丈夫だ。
リュックの中にピクニック用のシートと、学校帰りに買ったおにぎりを入れた。
味気ないだろうか?
そんなことを考えながら、私は階段を降りた。
書斎では、まだパパがパソコンをしている。また、ゲームかなにかしているのだろうか。
ここ3日間、ろくな会話をしていない。私が避けているだけなのだけど。
どうせ話しても、パパを嫌いになるだけだ。
2年前、私はやっと悟った。この人は、私が何を言っても、どんなに思いをぶつけても、決して向き合ってはくれない。
だから、私は夜の星空に、逃げようと思った。