白を基調とした10畳ほどの部屋。
家具はベッドしかなく、そのベッドには長い薄桃色の髪をした少女が上半身を起こした状態でベッドの横にある窓の外を見つめていた。
縦長で大きな窓からは、少女が住む街並みを見渡す事ができる。
少女はこの部屋から見る街の景色が好きだった。
少女が窓の外を眺めていると、1人の青年が静かにドアを開けて入ってきた。
少し長めの黒髪に青のメッシュを入れ、カーキーのトレンチコートを羽織っている青年だった。
「気分はどうだ?」
「凄くいいよ」
少女がそう言って笑いかけると、青年は安堵の表情を見せて笑った。
このやり取りが2人の毎日の日課だった。
それからしばらくの間会話をしていると、部屋の外の通路からドア越しにサイレンの音が鳴り響く。
「いってらっしゃい」
「ああ。いってくる」
青年はそう言うと、少女の唇に自分の唇をあてた。これも日課だ。
青年が部屋から出て行くと、少女はまだ青年の唇の感触が残っている唇に指で触れ、俯いた。
(あと何回、こうできるんだろう……)
少女はいつも決まって心の中でそう呟き、悲しげな顔で窓の外を眺めるのだった。