「迷いというのは何も生かす殺すの決定で生じるものでもない」
「では、どのような迷いが…?」
「簡単じゃよ」
レムは苦笑して、
「戦いを続けるか、止めるか。あの者はそれで迷う可能性が高い」
と、言った。
「止める事は…」
「無いと思うかな?」
「…」
メディナは難しい顔をしながら、ダリルと話をしているザックを見た。
「ま、こっちはクリスタルの扱い方を教えるだけじゃからの。そちらの方はお前さんが何とかするんじゃな」
レムは剣を壁に立てかけて、椅子に座った。
「…わかりました」
メディナは釈然としない表情で、静かに頭を下げた。
「メディナよ」
「?」
「…いや、やはり止めておこう。何でもない」
レムは頭を横に振った。
「どうしたのお爺ちゃん?」
エミルは不思議そうな顔でレムを見上げた。
「何でもないよ。エミル」
レムはエミルの頭を優しく撫でた。
「…?」
メディナは首を傾げて、腕組みをした。
先ほどから二人の会話を聞いていたエナンはその様子を見て、小さな違和感が生じた。
エミルの飲んでいたミルクの湯気が、彼とレムの間を漂っていた。