「グレアム博士。今日はお願いしたい事があってこちらに来ました」
「お願い?」
グレアム博士と呼ばれた老人は小さく首を傾げた。
「これをご覧下さい」
マーチンは懐から袋を取り出して、クリスタルを手の上に乗せた。
「!?」
グレアムは目を大きく見開いて、それを見た。
「クリスタルを見た事は?」
「…ある。一度だけだが …」
「メドゥナ家をご存知ですかな?」
「メドゥナ家?…ああ、あの代々優秀な騎士を排出してきた…」
「そうです」
マーチンは満足げな表情で、小さく頷いた。
「そのメドゥナ家はエリック王によって潰されました」
「…エリック王か…」
グレアムは苦い顔をして、首を横に振った。
「私は前当主から仕えるマーチンです。メドゥナ家を再興する為にあなたの力が必要なのです」
マーチンは静かに頭を下げた。
「…」
グレアムは天を仰いで、一つ大きく息を吐いた。
「…エリック王はついにクリスタルクラッシュの育成に成功したのだな」
「そうです」
「長年の研究の成果だった。これで帝国のクリスタルクラッシュと互角の勝負ができるはずだった」
彼は一つ間を置いて、
「その成果を奴は強引に奪おうとした。ワシの命と共にな」
と、震える声で言った。