「あーっ!」
私はあいつを指差して大声を上げた。
「おはよ、ユキ」
あいつはにこにこしながら1歩前に出てきて、私はさっとナナミの後ろに隠れた。
てゆーか、何で呼び捨て?
あなたにだけは、呼び捨てにされたくない。
「何だ。知り合いだったのか」
「じゃ私たち意味ないね」
「え、ちょっと!」
「あとは若い2人に任せた!」
「ユキ、頑張ってね」
ナナミとマサトは気を利かせたつもりでいるようで、私たちを残して教室に入っていった。
こいつとは何も話したくない。
私は自然に立ち去ろうとした。
「ねえ」
後ろから制服の袖をつかまれて、私は立ち止まった。
これ昨日もあったよね。
「メアドとケー番教えて?」
「は?」
カチンときた。
私は腕を振り切って振り向いた。
「他に言うことないの?!」
「他って?」
忘れてるのか、ただ鈍いのか、からかってるのか。
そっちはどうだか知らないけど、私にとってはファーストキスなのに!
あの言いようからすると、謝罪の言葉は出てこなそう。
それならそれでいい。
もう2度と顔見たくない!
ビンタしようと思ったけど、周りに人いたらか諦めた。
私は目の前の人を睨みつけて教室に向かった。
*
昼休みになって、皆お弁当を食べようとグループを作り始める。
そこにナナミがお弁当を持ってやってきて、私たちは机をくっつけてお弁当を食べ始めた。
「そーいえば、ケイタくんとはどーなった?」
「ケイタ?」
「今朝の人だよ。名前知らなかったの? 福崎啓太くん」
こんなのフェアじゃない。凄い悔しい。
私はあっちの名前知らなくて、あっちは私の名前知っててさ。
「メアド交換した?」
「聞かれたけど断った」
「え! もったいない!」
「もったいなくないよ」
そう言って卵焼きを口に運ぼうとしたとき、私の携帯のバイブが鳴った。