優はそう言いながら京都達に近づいた。
「何でこっちに来たんだよ!殺されるぞ!」
と京都は怒鳴ったが、優は無視して京都の傷を止血した。
「無視するな!」と、言いたかったが思わず口を閉ざした。優の顔には殺意しかなく、京都の気迫とは比べ物にはならないくらいの気迫と殺気があった。
「俺が、六年前のことを改めて調べようとした理由はそこの青山の事件がきっかけだ。被害者らは全員六年前に関わっていた。俺は京都達の手助けになればと思い調べると俺はとんでもない真実にたどり着いた」
心境は殺気めいていたが、口調は冷静を保っていた。
「真実?」
京都が聞くと
「あぁ。六年前の事件で捕まった犯人は未成年で名前は公表されなかった。少年刑務所を尋ねると名前が分かった…それが滝本悠馬だ。しかし、あの忌々しい事件にはまだ続きがあったんだ。当時、奈古屋裁判で判決が下されたのにも関わらず滝本は青森少年刑務所に送られたんだ。そして、四年後滝本は高知少年刑務所に送られている……だが、実際に少年刑務所に送られた人物は滝本ではなかった」
「はっ?どういう事だ?優?」
全く意味が分からない事をいう優に京都が聞くと
「つまり、そこにいる杉本冬馬は六年前一家惨殺事件を起こした犯人滝本悠馬って事だ!」
優が杉本を指さして答えた。急な話に戸惑う京都だったが
「ちょっちょっと待ってくれよ。犯人の刑期は確か十年……何故出てくることが出来たんだ?」
京都はほとんど覚えていない六年前の事件の事を必死に思い出して聞くと
「確かにそんな事が起これば脱獄とか世間で騒がれそうだが、脱獄を手伝ったのも事件を起こしたのも全国でも有力権力者の一人だったら話は別だ。確証はないが、裏付けるかのように滝本悠馬が高知少年刑務所に送られた日とエリート刑事杉本冬馬が愛知県本庁に入所したのはほぼ同じ時期で、杉本冬馬は滝本と同い年……」
優がそこまで言うと京都も理解したようで唖然としていた。いや、そんなはずはない。優から兄達を殺した犯人は捕まって刑務所にいると聞かされたのが当時……いや、今でも心の支えだったのだ。今更そんな事を聞かされたくはない。京都が耳をふさごうとした時だった。
「素晴らしい」
渡沼の一言が京都の絶望への淵へ追いやった。