「逃げんな!!」
速い!!
どう考えても女とは思えない速さだ。
カバンを持っていた僕は、簡単に追いつかれて捕まった。
「もう逃げれないよ。」
いたずらな笑みを浮かべながらその少女が言った。
「なんかようかよ静乃ちゃん。僕は早く帰りたいんだよ。」
これが限界の抵抗だった。
「ふざけんな!!」
頭にゲンコツが飛んでくる。
ガンッ!
「イッタッ!?」
「春、こんなに休んでよくそんなこと言えるね。あたしがどれだけ大変だったかわかんの!?フウマは頼りになんないんだから春に休まれたら困んの。」
「こんなときくらい会長のフウマに任せなよ。それに静乃ちゃん副会長だろ。僕書記だよ?」
「っだから、フウマはこういう仕事しないでしょ!」
くそ、トップ二人がなんでこの二人なんだ。
彼女は涼原静乃(すずはらしずの)。
成績優秀、スポーツ万能、おまけに容姿端麗といういわゆる最強というやつだ。人当たりも非常によく、男女問わずモテる。
僕もそう聞いていた。
しかし、彼女には少し裏がある。
フウマ、静乃ちゃん、そして僕は生徒会の会長、副会長、書記という役職についている。
フウマが会長をやっているのはあいつの気まぐれだ。その気まぐれに付き合わされて僕まで出馬することになった。
結果、なぜか二年生が出馬してこなかったため、当選した。
生徒会メンバーは見事なまでにフウマが集めたメンバーになった。
ただ一人静乃ちゃんだけを除いて。
フウマのメンバーの対立候補が静乃ちゃんで、もちろん静乃ちゃんは周りの評価が高いから、当選した。
僕はそれで良かったと思った。
真面目な彼女ならかなり働いてくれるはずだと。