昔アニメで見た宇宙基地みたいな場所で、軍服を着た人々が慌ただしく走り回っている。中には血まみれでふらついてる者や倒れたまま動かない者もいる。
「エング王!!やはりエブニー星の奴らです!」
黄色いマスクを被った人が、長い白髪の老人に言う。老人は顔中に冷や汗をかき、少しうつむいたまま叫ぶ。
「非常用の救命宇宙ボートの用意を!…テシとテチはいるか!」
同様に黄色のマスクをした、テシとテチと呼ばれた二人組が老人の元にかけよった。
「父上、何でしょうか。」
「テシ。テチを連れてこのボートで逃げろ!!」
テシと呼ばれた大柄の男はその言葉に取り乱した様子で、思わず老人…父王の腕を掴む。
「父上!私はもう大人です!戦わせてください!!この星を守らせてください!」
「父上!僕も戦えるよ!逃げるなんて嫌だ!」
テチの方はテシよりも二まわりほど小さく、声の感じからしてまだ子供だろう。
「この星の為に生きることが、この星を守るということだ。」
父王の合図で二人は球形のボートに押し込められた。中からボートを叩く二人の悲痛な叫びが聞こえてくる。
「発射!!」
王の声を合図にボートは空彼方へと飛んで行った。気付いた時にはもうボートは肉眼で確認できなくなっていた。
「テシ…テチ…どうか生き延び…」
王が祈りを捧げたその瞬間。
王は自らの身体が貫かれる音を聞いた。
「よう王様…」
背後で不適に笑う、黒いマスクを被った男…そのマスクには紛れもなくエブニー星の紋章が刻まれていた。
抵抗する間も無く身体から剣を引き抜かれた後、王はその場に崩れ落ちた。
自分の名を呼ぶ臣下達。侵入してきたエブニーに次々と殺される臣下達…
王が最後に見た物は基地に爆薬を仕掛けるエブニーの姿だった。
「すまない…我が愛する者達よ…」
数分後の自分の星の爆発音の前に、王は自らの心臓音が止まるのを聞いた。
「兄ちゃん、見て。流れ星がいっぱい来たよ!キレイだね…」
テチはボートの外のたくさんの流れ星に、無邪気に、そして純粋に感動して跳び跳ねた。
テシにはその流れ星の正体が分かっていた。そして自分の星がたどった運命も…。
「兄ちゃん泣いてるの?強くなれないよ。星を守れないよ?ねぇ兄ちゃん…」