うるさいギャラリー達を駆逐した八雲は、グランドの一隅で談笑する小早川と須藤に気づき、歩み寄っていた。
「モテモテだな、八雲」
茶化す小早川に、八雲は渋い顔をした。
「練習に集中できんっ、迷惑なだけだっ!」
八雲らしい反応に、小早川と須藤は微笑んだ。
「昨日の試合じゃ大活躍だったからな、お前は。
騒がれても仕方ないだろうよ」
笑顔で語る須藤。
「あいつらの中で試合を見に来た奴が何人いる?
試合結果だけ見て騒ぐような輩に、愛想をふりまく必要はねぇっ!」
「そりゃそーだな」
須藤は笑いながら相槌をうった。
「そういえば竜之介、スタンドの最前列に陣取ってた時もそのサポーターつけたけど、いつもつけてるのか?」
須藤の左肘に視線を落とす小早川。
「これか?
これは八雲が頭数で不利だから、乱闘になったら加勢しろっていうんで、臨戦態勢でスタンバったんだ。
なのに、小競り合いにすらならなかったじゃねーかっ!」
そういって須藤は、八雲を睨んだ。
「高校野球の試合で乱闘なんて、まずおこらないよ」
発声原に視線をむける三人は、歩み寄ってくる哲哉に気づく。
「……この野郎、ハメやがったなっ!」
再び八雲を睨みつける須藤。
「てっきり大澤が騒ぎをおこすとおもったんだがなぁ」
頭をかく八雲に、哲哉は呆れてため息をついた。
「そんな事いってると、また大澤さんに殴られるぞ」