川沿いの(といってもコンクリートでおおわれたほとんどドブ川に近い川だが)道を歩きながらワンダに向かう。
歩きながらいろいろな疑問について考えた。
あの事件から結構たった。なのになんの報せも警察からはない。
人が、人が二人も殺された。
それも住宅街の民家で。
どうして犯人が見つからないんだ。
それに周りの態度もおかしい。
少なくともこのことは直井家を通して担任には伝わってるはずだ。
なのに、担任の態度には不自然さがなかった。
まるで、事件のことを知らないかのように。
いろいろな考えを巡らせながら、春は歩いていた。
?
なにかが変だ。
なにが?事件のこと。
いや、違う。
今の状況が。
ふと視点を前方に向けた。人一人いない。
この時間に人が一人も?
ふと、後ろから気配を感じた。
振り返る。
そこにはスーツを着た男が二人たっていた。
人はいた。
だが違和感が残ったままだ。
違和感が残ったまま、視線を前方に戻そうとしたその時だった。
「坂野春だな?」
もう一度視線を、今度は体も一緒に後ろに向けた。
「そうですけど、どちら様ですか?」
一人が返答もせず、もう一人に向かって話し出した。
「どうだ?」
「やはり、反応はない。ここまで近付いても感じ取れないなら、間違いないだろう。」
「やはり、人払いをかけて正解だったな。」
二人ともがこちらに向き直った。
ヤバイ。
なにかがヤバイと体が信号を発している。
でもこの感じ、動いたらもっとヤバイ。
「申し訳ないな。坂野春。用はなくなった。だが、払ったリスクが大きいんだ。悪いが死んでもらうよ。」二人のうちの一人、はじめしゃべりかけてきた大柄な男はそう言って、スーツの中に手を通す。
ヤバイ…
逃げろ!
ダメだ。たぶん向こうの方が早い。
てか、一体なんなんだ!?
ナイフを取りだし、半身で大柄な男が構えた。
もうダメだ。
コンコンッ。ガチャッ。