「涼にはお別れをしてきたの」
「…なんだって?」
「大輝…私、私ねここにはいないの」
「いないって…吉岡、あんまり面白い冗談じゃないよ」
僕は無理に笑って見せたが彼女の顔を見て冗談を言ってると思えなかった。
嫌な予感しかしなかった。吉岡は何が言いたいのだろう。
「…大輝」
吉岡は僕から離れて手を合わせてきた。
「大輝…私は」
吉岡は目を閉じ、また涙をこぼした。
「やめてよ、」
僕は吉岡を抱きしめた。抱きしめることができた
「やめてよ吉岡、こんなことやめろよ!」
「ごめんね…」
「夢だよね。これも夢なんだろ!」
「……」
「なあ夢だって言ってよ!嘘だって言ってよ!」
「私は、」
「吉岡!」
僕は泣き狂うしかなかった。嫌だ、何も聞きたくない。
「私、あの事故で死んでたの。でも大輝の夢と私の想いで不安定なこの『私』ができたの」
「……」
「ここにいる『私』は大輝の夢なの、現実の存在じゃないの、だからお別れしなきゃいけないの、もう一度ここへ来るために。本当に大輝と会うために。それが吉岡花歩じゃなくなるとしても」
吉岡が何を言ってるのか分からなかった。