「吉岡花歩じゃなくなるってどういうことだよ…」
「…」
「吉岡、吉岡がどこかに行くなら僕も一緒に」
「大輝には待ってて欲しい。大輝は現実の存在だから」
「そんなの嫌だよ!無理だ!」
「大輝」
吉岡は僕に強くしがみついた。
「大輝、好きよ。好き。好きなの、私のこと忘れないで。覚えていて。ずっと、ずっと好きでいて、大輝、男の子だから待てるよね」「…」
「私、大輝を好きになった自分を、大輝が好きになってくれた自分を誇りに思えるよ」
何もわからない。ただ吉岡が僕に別れを告げようとしている。
「約束しただろ!ずっとそばにいるって!」
「私は生まれ変わるの。ずっと、大輝の傍にいれる人に」
「何言ってんだよ!つまんないこと言うなよ!吉岡じゃなきゃだめなんだ、」
「大輝、私は吉岡花歩じゃなくなっても私であり続ける」
吉岡が僕にキスをした。涙の味しかしなかった。そして僕の腕からすりぬける。
「吉岡!待って!」
「大輝、信じてるよ。待ってて、…ごめんね」
吉岡の腕をつかもうとしたが、消えていった。
あたりを見渡す。吉岡の姿はどこにもなかった。
何か耳障りな音が聞こえる。それは自分の絶叫だった。