返事は…無かった。
薄暗い室内に埃が舞っている。
視界は悪いが、ここに彼女の姿が無いことは、分かった。
「……ッ」
無意識の内に当たり前だと思っていた。
彼女が自分を待っていてくれると。
いや…、待っていない訳がない、なんて。
目の前が暗くなるのが分かった。
絶望? 動揺? 感傷?
すべてをぐちゃぐちゃに混ぜた感情が、青年を襲う。
膝が震えだし、立つことすら危うい。
「翅…、翅…」
口から溢れたのは彼女を呼ぶ声。
そのまま消えてしまおうかと思った。それほどまでに、彼女のいないこの場所が、嫌だった。
「設楽君っ」