｢唾を吐いた事くらいはあるじゃろ？その感覚でやればいいんじゃよ｣
レムはそれを見て、苦笑した。
｢はい…やってみます｣
ザックはゴクリと唾を飲み込んでゆっくりと剣を上げると、
｢はっ！｣
というかけ声と共に、素早く剣を振り下ろした。
その瞬間、剣の切っ先からエネルギー波が飛び出して、地面にぶつかって弾け飛んだ。
｢はあー…｣
ザックは大きく息を吐いて、エネルギー波がぶつかった地面を凝視した。
｢唾を吐く感覚でいくとそのくらいのエネルギー波になる。もう少し大きなエネルギー波を出したい場合は、大きな声を出すような感覚で振り下ろせばよいぞ｣
｢はい｣
｢ただし、まずは慣れる事が第一じゃ。先ほどの感覚を体に叩き込むため繰り返し練習せよ｣
｢それは何回くらいやればいいんですか？｣
｢百回じゃ｣
レムは短くそう言って、持ってきた椅子に腰掛けた。
｢…一つ聞いてよいか？｣
｢？｣
ザックは顔を上げて、レムを見た。
｢その力を使って人を殺さなければならなくなった時、お前さんはどうする？｣
｢…｣
彼は目を大きく見開いた。
｢考えた事がない、といった顔じゃな｣
レムは小さくため息を吐いて、頭を掻いた。
｢いえ…考えた事はあります。ただ、答えが出ていないだけです｣
ザックは難しい顔をしながら、首を横に振った。
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