「ねえ。何でメール無視したの?」
私は一瞥をくれて歩き出した。
「ねえー」
ケイタは私の後ろをついてくる。
もう私は我慢の限界だった。
「ついてこないでよ!」
私は振り返ってそう言い放った。
ケイタはぽかんとした顔をして私の方を見ている。
「ついてくるな言われても、俺の家こっちだし」
「じゃ話しかけないで!」
「何で?」
「何でって……」
「昨日のこと?」
何だ、分かってるんじゃん。
私が頷くとケイタは私の近くに歩み寄ってきて、私は反射的に後退する。
「昨日は……ごめん」
今、謝った?
絶対謝んなそーな感じだったのに。
見直した、かも。
ちょっとなら許してやってもいいかな。
「次はいきなりやんないから。ね?」
「は?」
謝ってた時の暗い表情とは一変して、にっこり笑ってそう言った。
前言撤回。やっぱり絶対許さない!
「ばーか!」
私は大声で言うと、早足で家に向かった。
*
いきなりやんないから、って何!
そーゆーことじゃなくてさ……ああ、もういい!
家への道を歩いていると、後ろから誰かの声が聞こえた。
振り返ると、私の少し後を追いかけてくるケイタの姿があった。
「待ってよ、ユキ」
「ユキって呼ばないで!」
首だけ後ろにやってそう言うと、歩調を早めてケイタと距離をあけた。
「俺謝ったよね? 止まってよー」
「話しかけないで!」
「……じゃ、毎日メールとか電話するよ?」
「は?」
何それストーカー?!
でもやりそうな感じする。
私はため息をついて立ち止まった。
私に追いついたケイタはニコニコしながら私の隣に来る。
「手繋ぐ?」
私は無視して歩き出す。
早く歩いてるつもりでも、歩幅が大きいケイタと並んでしまう。
もうやだ。