何度も振り返った
貴方が追い掛けてくれるんじゃないかって
携帯を握り締めて歩いた
貴方がもう少し一緒にいようって電話をかけてきてくれるんじゃないかって
家までの一本道を泣きながら歩いた
やっぱり駄目かって
残酷な現実が降り懸かってどうしようもなく寂しくて
独りで歩く事に慣れたいつもの道
数えたら独りで歩く事の方が多いはずなのに
貴方と歩いたこの道は数え切れる程しかないはずなのに
何でだろう
貴方との思い出の方が多過ぎる
貴方と手を繋いで歩いた
貴方と沢山の言葉を交わしながら歩いた
『やっぱり駅まで送るよ』貴方ともう少しいたくて私が言った
『やっぱり俺が送るよ』貴方が私を心配してくれて言った
そうやって往復したこともあった
馬鹿だねって笑いながら歩いた
『暑いね』と少しべたつくお互いの手を重ねて歩いた
『涼しくなったね』と気持ち良い風に距離を縮めて歩いた
『寒いね』と冷たい風に身体を寄せ合って歩いた
幸せな時間だった
二人の足音が静かな夜に響きそれが大好きだった
寂しさが込み上げて泣いた時もあった
少し困った顔で『いつも苦しい思いをさせてごめんね』と言って抱きしめてくれた
ただ貴方の優しい腕の力に暖かい腕に身を任せて泣いた
堪えてきた想いが溢れ出して次々に流れる涙を拭ってもまた次の涙で頬が濡れて拭うこともやめて顔をぐしゃぐしゃにして泣いた
独りは寂し過ぎる
貴方を思い出し過ぎる
隣に貴方がいなくて虚し過ぎる
大好きだったこの道が
時を重ねる毎に嫌いになる
『あと何度二人で歩んで行ける?』
貴方に聞く事も出来ない
だったら残された時間を奇跡だと思おう
大切に歩こう
出来れば笑って
泣きながら歩いても悲しみは消えないし思うのは目の前に広がる現実
望みを賭けて『最後に一度だけ』と振り返る
涙にぼやけて見える景色は余りにも殺風景と悲しく伸びる私の影
ただそれだけ
ねぇ私思うんだ
貴方と歩くこの道も大好きだったけど貴方が待つ駅に向かうこの道が一番大好きだった
『今日はどんな話をしよう』って『今日はどんな話を聞かせてくれるだろう』って貴方に会える胸は希望と喜びで膨らんで足取りが軽くて少しだけ走ってみたりして
貴方に会う前の私がきっと一番幸せに満ち溢れていた
早く会いたくてどうしようもなく会いたくて
そんなこの道が大好きだった
ねぇ
また貴方に会いたい