午前さまと鬼嫁

三毛乱次郎  2010-11-30投稿
閲覧数[923] 良い投票[0] 悪い投票[0]


「お帰りなさい、遅かったのね。」

仕事仲間と呑んだ帰り。

家路に着くと出迎えたのは、テーブルにうつ伏したままの妻だった。

「ああ、ちょっと呑んできたもんでな。」

「今日は早く帰る、て言ったじゃない。」

「そのつもりだったけど…。」

ネクタイを外した俺はそのとき、泣いている妻の様子に気づいた。

「ごめん。」

謝ってみるが、彼女の泣き声は止まらない。

「なんで早く帰ってきてくれなかったのよ。そんなんだから、私…。」

顔を上げた妻を見て、俺は目を丸くさせる。

「どうしたんだ、お前?。」

…その口元には、赤黒い血の跡がベッタリと広がり、

着ているエプロンにまで、染みを作っている。

「あいつらに食われちゃったじゃないの。」

そう言って、恨めしげに俺を見つめた。

…焦点の定まらない、

明らかに妻とは違う、銀色に光る瞳で。



『午前さまと鬼嫁』終。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 三毛乱次郎 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ