「それで?それで?翅さんと設楽君はどうなったの?」
小さな少女が興味津々と聞く。
近くで暖炉の薪がパチパチと火をあげている。
その声にこの世の大半を知り尽くした老婆が答える。
「…結局翅の呪いを解く方法は見つからなかった。設楽は心を無くした翅の体が死ぬまで看病を続けた。翅が死んだ朝に、死体を処分すると、姿を消した。」
「翅さん…直らなかったの…」
「普通に物語なんてそんなものなのよ。禰々(ねね)」
悲しそうに呟いた少女に、老婆は語りかける。
「でもね、たまに奇跡が起きるの…。それこそ神様の気まぐれね。けれども、それを信じて人は生きるのよ」
「…良く分かんない」
「今は分からなくても、きっと分かる日が来るわ」
翅と設楽の話は、この世にたくさんある内の、
めでたしめでたしではない話だっただけ。
これが続いた世界のある結末。
完