「病気じゃないの?レムさんからはそう聞いたけど…」
「おじいちゃんはそう言うよ。けど、エミルはお母さんとお父さんのお墓しか見てないもん」
エミルは静かに首を振った。
「…エミルちゃんのお父さんとお母さんはどこで亡くなったの?」
ザックはかすかな胸騒ぎを感じながら、エミルに尋ねた。
「わかんない。お父さんとお母さんは農作物を売りに行く時に行く場所を教えてくれないから」
「農作物を…そうすると、一週間くらい家にいないんだね?」
「うん。その間に誰か知らない人が家に来ておじいちゃんを呼んだの」
「知らない人?」
「見た事ない人だった。それでおじいちゃんがエミルに留守番をするように言って、その人と出て行ったの。帰ってきたらお父さんとお母さんが死んでたって…」
エミルはそこまで言って、唇をギュッと結んで拳を握り締めた。
「…」
ザックは何も言わずにエミルの頭を優しく撫でた。
―エミルちゃんの両親は…。
そこまで考えて、彼は唇を噛んだ。
―いや、憶測で物事を判断してはいけない。今それをしてもエミルちゃんの為にはならない。
彼は一つ小さく頷くと、
「寂しいなら、ここで寝てもいいんだよ」
と、優しく言って、毛布をそっとエミルの肩に掛けた。
「…うん。ありがとう、お兄ちゃん」
エミルは小さく頷いて、目を閉じた。
窓から漏れる月明かりは二人の寄り添う姿を暖かく包み込んでいた。