あるとき、優は中庭で絵を描いていた。
暖かい色の優しい天使の絵だった。
優はその絵をぎゅっと抱きしめ、父母の事を考えてみた。
顔も解らない父母。
解るのは、お母さんが天使でお父さんが悪魔ということだけ。
ふと、前を観てみると見たことのない子が立っていた。
「えっと…私、じゃまでした?」
優が無理に微笑みながら話し掛けるとその子は「君の絵、すっごく暖かくて綺麗だね!」と、ニッコリ笑った。
「あ、ありがとう。あの!お名前なんてゆうの…あれ??」
もうその子はいなくなっていた。
幻?優は、深く考え込んでいた。
時計を見ると、もう放課後だった。
あの時の子は誰なんだろう?
何年生?
疑問がたくさんでてきた。
制服も少し違った。優と同じセーラーなのに下はハーフズボン。
謎がいっぱいのその子を優が次に見たのは一週間後。久々にシスターの所に行ったときだ。
『あ!』
二人の声が重なった。
「私あなたに聞きたいことがたくさんあったの!」
優は、久々にあの子に会えて興奮していた。静かに座る琥珀をキラキラした目で見ていた。
「そうなの?ボク琥珀ってゆうんだ!」
「琥珀くん?」
「はは!ボクは女の子。」
「そうなの?でも制服が…」
優は琥珀を頭からつま先まで見渡した。
琥珀は満足げに笑った
「ボク特待生なんだ!理事長の姪っ子!」
「へえ、よく見るとスカートよりそっちの方が可愛いかもね!」
「ありがとう!優」
二人は、シスターも入り込める隙間がなくなるくらい仲良くなった。
「私、琥珀のこと見たことないんだけど」
「ボクは基本授業にはでないからね。それよりさ、優の羽!すごい綺麗だね!」
そんなことを言われたのは初めてだ。
優は驚きを隠せなかった。
「何言ってるの。悪魔と天使のハーフなんて気持ち悪いでしょう私はこの羽が嫌いよ。」
「なんで?ボクよりましだよ、ボク羽がないんだよ?」
優は戸惑った。なんて言えばいい?
何か言った所で同情にしか聞こえない気がした。
琥珀は品やかにくるっと回った。そして『ね?』と笑って言った。
その笑顔は可愛かったが、同時に寂しそうにも見えた。