楽しそうに話す二人を見て、シスターはゆっくりと語り始めた。
「二人はずっと一緒に遊んでたのよ。でも琥珀が老婆に引き取られた。琥珀はそのこと覚えてる?」
琥珀はにわかに笑い「そのお婆さんすぐに死んじゃったよね、ボクのせいで」と呟いた。
優も「琥珀は悪いことなんてしてないわ!」と、真剣になって言った。
「でもみんなボクのこと『怪獣』って呼ぶ。やっぱり悪魔はひどいって。」
「琥珀、悪魔だったの?」
「言ってなかったけ、ボクは悪魔。『怪獣』の悪魔だよ。羽がなくたってそう。そんな弱ってるボクのところに死神がきたんだ。ボクの願いは一つ。あの事件を世間から消すことだった。死神って頭良くて、わざと願いを間違えるんだ。それでボクは何回も願いを言った。ボクは『怪獣』だったから、目がうつろになったり意識を失ったりしなかったんだって」
琥珀は心なしか目に涙を溜めているようで最後に『長くなっちゃったね』と言った。
心花のパイもさっきまでのふっくら感は消えてしなしなだった。
「私も死神に会ってみたいわ。そうすれば私が死神を浄化する。」
「無理だよ。学園にいるあのシスターにしかできない。」
「私も一回浄化したことあるけど」
「え!死神にあったの?」
「悪魔の暴走と聞いたわ。私が浄化をしたって…シスターが。」
「優は神の子ってこと?」
「神の子?」
「シスターも神の子なんだ。ボクも神の子。」
「そうなの?神の子って何なの?」
「簡単に言えば浄化ができる人だよ。ボクはできないけど。神の子の中でもいろいろあるみたい。」
優は心花のパイを口にほおばり、思いっ切り飲み込んだ。
口と喉の境界線の辺りがヒリヒリする。飲み込むときにパイがこすれたのか。いやむしろこれが気持ちの表れなのだろうか。わからない。優は重い口を開けた。
「神の子が死神に食われるとどうなる?」
「ボクは何ともなかったけど」
「私も大丈夫ってことよね」
琥珀の表情が固まった。
優が死神に喰われる前にすぐ浄化をできるか。
優が喰われてしまったら?
琥珀の初めての友達がいなくなる。どう止めたらいいのか。
「それはまだわかんないけど死神には絶対近づかないで。大変なことになるよ。」