辺りは静けさを取り戻した。校舎のあったところは荒野になっていた。人間の死体の一部も転がっていた。精霊はそれを見ると、浄化の炎で死者の肉体と魂を弔った。辺りから死臭が消えた。美佐代は天を仰いだ姿のまま泣いていた。今までずっとためてきた悲しみの涙を全部流すように泣いていた。やがて美佐代は明るい笑顔を取り戻すと、体ごと魂が天に昇っていった。精霊もそれに続いて地上から姿を消した。
「美佐代ちゃん、会いたかったよ!」
呪縛から解き放たれた2人は、美佐代との再会を喜んだ。美佐代のほうも呪縛から解き放たれ、3人の魂は、天に昇っていった。3人に悪い記憶はもう残っていない。
精霊は地上を眺めた。荒野と化した中学校の跡地は、幾年かするとカウンセリングセンターになっていた。いじめの問題が消えることはなかったが、以前と比べものにならないほどに緩和されていた。精霊はそれだけでもうれしかった。