そんな中、恐怖を微塵も感じていないような表情をして立っている人物が2人。
1人は少し長めの黒髪にメッシュをいれている青年で、もう1人はニット帽をかぶっている少女だった。
2人は周りの人々には目もくれず、視線を交差点にいるパラサイトに集中している。
パラサイトは長い体で無人の車を潰し、建物をなぎ倒すなどして暴れる。
人々がその場からいなくなり、青年と少女の姿を目にとらえたパラサイトは2人の方に体を向け突進してきた。
「やりすぎないでよ。治すの私なんだから」
「分かってる」
パラサイトを目の前にして会話を交わすと少女の姿は一瞬にして消え、次の瞬間には交差点に倒れている男のもとにあった。
青年はぎりぎりまでパラサイトを引きつけ真上に高く飛ぶ。
青年は空中で担いでいたバズーカ砲を構えると、巨大な1発をパラサイトに向けて発射した。
弾が命中し黒い煙が辺りに漂う。
青年は小さなビルの屋上に着地し、徐々に晴れてくる煙を見ていた。
刹那。煙を切り裂いて黒く鋭い何かが青年の方に飛来してきた。
青年がバズーカ砲の横についているレバーを引くと、銃砲の両側から剣が顔を出す。
青年は右側の長剣を抜いて、バズーカ砲を左に持ったまま飛来してくるものを剣で弾いていく。
それは甲高い音をたてて、青年の横に散らばる。
見てみるとそれは芋虫の背中に伸びていた針だった。
パラサイトの背中についているときはあまり長さを感じさせなかったが、その長さは2メートルを越すようだった。
その時急に足元が揺れ崩れだした。
青年はすぐさま隣のビルに飛び移る。
さっきのビルを見てみると、そこにパラサイトが体当たりをしている姿があった。
パラサイトは無傷。青年が食らわした弾は、パラサイトの背中の針のせいか効き目が無かったようだ。
(これ以上暴れられたらまずいな……)
少女の言葉を思い出して小さく嘆息を漏らすと、青年はビルから飛び降りた。