拓「どこ行ったんや…あいつ…」
拓朗は翼を探して歩き回っていた。そして、歩き慣れた交差点のそばまできて、ようやく翼を見つけた
拓「おった!…翼!!!」
翼にむかって叫ばれた声。しかし、それは車の音にかき消され、翼はさらに一歩足を進めた
拓「おい!翼ぁ!!!!!」
さらに拓朗は声をあげたが、同じく大きくなった車の音がそれを遮る。翼の足はさらに進む
拓「翼!!!!!!」
ますます大きくなる拓朗の声と、それをかき消すように近づく車の音。
拓「つば…!」
はっとして拓朗が振り返った。そして、ちょうどその拓朗の脇を車が通りすぎた
拓「あかん!!つばさ!!!!!走れえ!!!!!!!!」
精一杯の声をあげたが、届かない
拓「翼、つばさあ!!!!!!!!!」
その声を遮るクラクションの音。それから、誰かの叫び声。
拓朗はその時、自分が何を叫んだのかも、その車がどんな音をあげたのかも、はっきり覚えていない。
ただ、真っ白になった頭にはっきり浮かびあがるのは、青信号を告げるメロディと、道路に広がった赤い色だけだった